世界史とキリスト　第二十回イエス・キリストの誕生

　ローマはギリシアのアテネと同じく、都市国家として誕生し、紀元前6世紀末に王を追放して共和政となり、貴族と平民によって統治されて来ました。貴族により構成される元老院に対し、平民の護民官と平民会が設けられていました。ローマは元老院が指導的立場を持ち、平民による重装歩兵を中核とする強大な軍事力によって、前３世紀前半にはイタリア半島全体を征圧しています。

　さらにローマは地中海を支配するカルタゴと対立し、三回に渡るポエニ戦争に勝利し、地中海沿岸地域を支配下に収めることになります。その後地中海東方にも進出し、前2世紀半ばにはギリシアの諸都市とマケドニアをも征圧。パレスチナに影響力を及ぼしてきたセレウコス朝シリアは、将軍ポンペイウスによって前6４年にローマの属州とされ、クレオパトラ女王で有名なプトレマイオス王朝も、前３１年のアクティウムの海戦で、オクタヴィアヌスによって滅亡させられました。

　そのオクタヴィアヌスが前２７年に、元老院によってアウグストゥス（尊厳者）という称号を得て、ローマの帝政が始まります。オクタヴィアヌスは共和政の諸制度を尊重しつつも、あらゆる政治権力を手中にして、事実上独裁的権力を持つ皇帝として統治することになりました。「ルカによる福音書」はイエス・キリストの誕生の由来を、この皇帝の名前を挙げて語っています。

「そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録せよとの勅令が出た。これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。ひとびとは皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。」ヨセフとマリアは、ガリラヤのナザレから、ヨセフの出身地ベツレヘムに向かい、そのベツレヘムでイエスは誕生したのでした。

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担当：梅津順一