手元にある高校世界史の教科書では、紀元前2000年ごろ北メソポタミアに起こったアッシリア王国は、前15世紀頃より勢力を増し、前7世紀前半には、鉄製の武器、戦車、騎兵隊などを用い、全オリエントを征服したと記されています。そのオリエント世界征服の一環として、北イスラエル王国が滅亡させられたのです。
北イスラエル国王イエフがアッシリアに貢物を捧げ、アッシリア王に服属したことは先回記しましたが、その後、国王ペカは、ダマスコやシリアの統治者と反アッシリア同盟を結びました。彼らは南王国ユダをも同盟に巻き込もうとしますが失敗、アッシリアのティグラト・ピレセル三世の侵入を招く結果となります。絶望的な状況に追い込まれた北イスラエルは、エジプトを頼んで同盟関係を結び、アッシリアに反逆。その結果、前722年に首都サマリアが攻撃を受け陥落し、北王国は滅亡したのです。
アッシリア帝国は被征服民に対して、強制移住政策を行いました。首都サマリアの陥落後、イスラエルの捕虜27290人が強制的にアッシリアに移住させられています。また、人口が減ったイスラエルの町には、外国から異民族を移住させました。この強制移住は反乱防止の意味があり、また熟練労働者を利用する目的もありました。強制移住政策は以前から知られていますが、アッシリアの場合は、規模の大きさ、組織的実行の点で顕著なものがありました。この政策は、バビロニアなどその後の帝国にも受け継がれていきました。
大学院生のころロンドンの大英博物館でアッシリアの遺物を見て、息をのんだことがあります。壁一面に、アッシリアの王が戦う場面の大きなレリーフがありました。その迫力、恐ろしさ、旧約聖書の世界が身近に感じられ、イスラエルの人々の恐怖が身につまされました。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/98/Assurbanipal_op_jacht.jp
担当:梅津順一
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- 世界史とキリスト教(2023年度)
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