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世界史とキリスト教 第五回 モーセと出エジプト

 出エジプト記によりますと、飢饉を逃れてエジプトに避難したイスラエルの人々は、数を増してエジプト中に広がっていきました。移住のきっかけとなった総理大臣ヨセフのことも知らない国王が登場し、イスラエルの人々が強大となっていくことに危機をいだくようになります。イスラエルの人々は、重労働を課して弾圧したのですが、それでも増え続けたので、粘土こね、レンガ焼き、農作業などさらに過酷に取り扱いました。

 エジプトにはヒエログリフ(神聖文字)があって、壁に刻まれた文字からいろんなことが分かるのですが、エジプト周辺の遊牧民が避難してきたことや、異民族出身の政府高官が登場したことは記されていますが、ヨセフやイスラエルの人々を特定するものは知られていません。ただ、聖書に、ファラオがイスラエルの人々を用いて、ピトムとラメセスという町を建設したという記述があることから、それを建設したラメセス二世(B.C.1290-1224年)の時期ではないかとも考えられています。(異説もあります。)

 ファラオがイスラエルの人々に一層ひどい弾圧を加えることになります。ファラオがイスラエル人に赤ちゃんが生まれた場合、男児であれば殺害せよと命じたのです。その命令を辛うじて逃れた男子がモーセで、誕生後三か月、隠しきれなくなった家族が籠に入れてナイル川に流したところ、水浴びしていたファラオの王女に救い出されています。従って、イスラエル人をエジプトから脱出させた指導者モーセは、ファラオの王宮で育ったとされています。

 モーセに関わるこのような伝説は、そのまま歴史的事実とは受け取りにくいのですが、モーセは名前からすれば、エジプト系の名前でした。そのモーセは成人して事件を起こし、アラビア半島のミディアンの地の逃れ、遊牧民エトロの家で保護され、その娘と結婚したのですが、神の山ホレブで、神の召命を受けます。「柴のあいだに燃え上がっている炎の中に主のみ使いが現れた」のですが、今日石油、天然ガスを産出する地域の出来事ですから、モーセに関する伝説にも、なんらかの歴史的根拠があったことを推定させます。

 エジプトに戻ったモーセは、イスラエルの民を脱出させるようファラオと交渉することになります。有能な奴隷を失いたくないファラオは、拒否するのですが、神はそこでエジプトにさまざまな災いを下します。ナイル川の水が血に変わり(赤潮?)、川の魚は死ぬ。蛙、ぶよ、アブ、さらにイナゴの異常発生。疫病(ウィルス?)の災い、雹の災い(異常気象)など。これらは今日でもしばしば起こる自然現象ですから、聖書に記された事柄には、なんらかの事実があったと推定することができます。

担当:梅津順一

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