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世界史とキリスト教 第三回 カナンの地でー遊牧生活

 神様に示されて、カナンの地に入ったアブラハムは、その時点ではとても世界史的人物とは言えません。アブラハムとその一族は、むしろ消え入りそうな人々、何かの事件があって、強力な民族に圧迫され、歴史から消え入りそうな存在でした。そもそも、神様が与えると宣言された土地も、彼らがまったく自由に使えたわけでなく、肥沃な土地にはすでに先住民がいました。

 カナンの地は日本の四国ぐらいの大きさですが、四国の中央部には四国山脈があるのに対して、カナンの地の中央部にはヨルダン川がながれています。ヨルダン川の狭い渓谷が平地で、地中海沿岸にもわずかな平地があるのですが、それ以外は山地、もしくは丘陵地でした。アブラハム一族は、平地に定住し農業を営むことはできず、だれも利用していない丘陵地に、羊、牛、山羊、ロバ、ラクダなどを飼育して生活していました。彼らは家畜の群れを率いて移動し、機会があれば穀物を栽培する遊牧民でした。

 日本の歴史には遊牧民の時代はありませんが、世界史には遊牧民がしばしば登場しています。穀物の栽培のためには平地と水が必要ですが、その農地を持たず、動物を飼育して生活する人々です。羊や山羊は、丘陵地や水の乏しいところに生える草で生活できます。その動物とともに移動するのが遊牧民です。北極圏に近いところにはトナカイの遊牧があり、中央アジアの騎馬民族も遊牧民です。とくに騎馬民族は強力で、農業民を支配して王国を建設することもしばしばありました。

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担当:梅津順一

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