【吉田満(1923-1979)】
吉田満は、戦争文学の名著『戦艦大和の最後』の著者です。吉田は東京郊外に生まれ育ち、旧制東京高校から東京大学法学部在学中に、学徒動員で海軍に入隊、士官として戦艦大和に乗務し、特攻作戦に参加、九死に一生を得て、生還しました。大和乗船者三千余名に対して、生存者は200名ほどだったといいます。戦後吉田は、作家の吉川英治に勧められて、一夜で書き記したのがこの本でした。敵戦闘機1000機に攻撃を受け撃沈される様を描いた叙事詩というべき作品です。
大和沈没によって海上に投げ出された吉田は、死を想いつつこう考えたそうです
「もし――再び生きられることがあったら、あれもしようこれもしよう。学徒兵の私は、涙をうかべながら海中をさまよいながら考えつづけていました。そのとき考えたのも、決して、大きなことや、非凡な人にしかできないようなことではなくて、日々平凡な生活の中で、隣人と仲よくしよう、親しい人たちを心から愛そう・・・といったそういうふうなことばかりでした。人生にとって、そういうことこそ、ほんとうに大切なことだと思いました。」
しかし、生還した吉田にとって、大きな課題が残されました。「人生に本当の意味があるのか、妥協ではない何か明白な価値があるのか、その価値のために自分も生きることが出来るのか。」学徒兵として死に直面し、どうしようもなく感じた空虚さ。その空虚さに打ち勝つものを内に秘めて生きることはできないものか。吉田は学生時代に、知識としてキリスト教をも知っていましたが、生還後は、生きる切実な糧を求めてキリスト教に向き合うことになったのです。
吉田は当初は、自分の理性の過信に躓いたといいます。「理性の認めないものはすべて受け入れまいと身を固くし」、しかし、それは宗教への無知からくるもので、その世界の「真理の深さと広さに驚嘆・・・次に・・・信仰を持つ人々の愛と誠実とそれらすべての実践に動かされた。」のでした。吉田は、作家への道ではなく、日本銀行に勤務し、戦後の日本の復興に尽力することになります。
担当 梅津 順一
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- キリスト教入門
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