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日本プロテスタント人物誌 No.22ウィリアム.ヴォーリズ

2022年9月25日

【ウィリアム・M・ヴォーリズ(1880-1964)】 

 前回取り上げたラッシュは、関東大震災に被災したYMCAの復興のために来日したのですが、ヴォーリズもYMCAの関りで、日露戦争当時の日本にやってきました。彼はコロラド州にある大学に在学中、日本の学校からYMCAを通して、英語教師の募集があり、近江八幡にある県立商業高校に赴任したのでした。ヴォーリズの生家は、敬虔な長老派の家庭で、彼自身も海外伝道の志を持っていました。

 ヴォーリズは学校で生徒の年齢と近く、気さくで兄のような存在で、すぐに人気教師となります。自宅で開いた週二回のバイブル・クラスも人気で、最初から45人もの生徒が集まりました。ヴォーリズはさらに一歩すすめて近江八幡YMCAをつくることになります。ヴォーリズに英語を学びたくて近づいた生徒たちから教会に通うものも現れ始め、洗礼を受けるものも十数名に登りました。その結果、社会的な摩擦も生じ、ヴォーリズは県から教師を解雇されることになります。

 解雇されたヴォーリズには、大学や都会のYMCAからの誘いもあったのですが、近江八幡での使命を果たすため、一信徒として、独立伝道者となる決心をすることになります。宣教団体に属さない独立伝道者は、経済的にも自活しなければなりません。今日有名なヴォーリズの建築設計の仕事は、いわば伝道者のアルバイトとして始められたものだったのです。学生時代、彼は建築に興味を持ち、独学で勉強していたことがありました。日本で西洋建築の専門家が乏しい中で、ヴォーリズが活躍する余地があったのです。

 ヴォーリズが設立した近江ミッション(兄弟社)には、二つの顔がありました。一つは、教会ではなく、信徒の運動としての伝道団体、もう一つは、教会、学校建築を手掛ける建築事務所。さらに、福祉事業としての近江療養院の設立。また、建築材料やメンソレータムの輸入から手掛けられたビジネス(営利事業)。ビジネスで得られた収益は、福祉事業に用いられました。ラッシュは清里で、アメリカ型の農村コミュニティを作り上げようとし、ヴォーリズは近江八幡で、伝道と福祉とビジネスが調和する世界を作ろうとしたのでした。

担当 梅津 順一

カテゴリー:
キリスト教入門
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